書評

子供を作らないという選択がある

投稿日:2017年11月7日 更新日:

子供を作らないという選択

家系図カッター

「子供を作らない」という強い決意と共に書かれた、そんな直球タイトルの本に出会いました。

著者は増田セバスチャンというアートディレクターやアーティストとして活躍する方です。

きゃりーぱみゅぱみゅのデビュー時からライブの演出や美術デザインを担当していることでも知られています。

原宿のショップ「6%DOKIDOKI」のプロデューサーとしても若者から厚い支持を集めています。

そんな増田セバスチャンの自伝「家系図カッター」には、タイトル通り己の血との格闘が貫かれています。

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家系図カッターの概要

「自分は子供を作らない」という静かで強い決意から始まる、増田セバスチャンの自伝です。

どういう家庭に生まれ育ち、どんな経緯で今の仕事をする様になったか、豊かな心理描写と共に語られています。

育児放棄する母、破天荒な父、リストカット依存症の妹、クレイジーな祖父や祖母…etc

内的にも外的にも底知れない貧しさを味わい、そして這い上がり、いま現在も戦い続ける増田セバスチャンのリアルが鮮明に綴られています。

子供は作らない。
僕は十代の時からそう決めていた。
~中略~
それから20年以上経ち、40歳になった僕はダイヤモンドのような硬度で、改めて言える。
子供は作らない。
なぜ?
それは自分の血を複製したくないからだ。
(まえがきより引用)

壊れた家庭で育ち、心の傷が癒えないまま大人になってしまった者たちはどうしたらいいのか?
つらいことだが、その人たちは自分の起源を徹底的に見つめ直すしかない、というのが僕の結論だ。
それによって、オリジナルの生き方が見えてくるような気がする。
自分の中に脈々と流れる血の正体を知った時に新しい世界が見えてくる。
(第五章 連綿・連鎖・煉獄より引用)

どうしようもなく繰り返してしまう、因果。
それでも僕たちはどうしても生きていかなくてはならない。
どうにかしなければ、この運命は変わらない。
どうしても僕は彼女たち(母や妹、自分のもとに集まってくる同じ様な境遇の若者たち)を見捨てられない。
見て見ぬふりをして生きていくということは、自分がこの世に存在してはいけないということと同義だ。
ヘドロの大地で俗物が蠢く、この苦界に身を投じて、自ら滅却していかなければならないのだ。
第六章 砂漠より引用

子供を作らないという選択

子供を作らないという選択をする人、夫婦は少なくありませんが、どんな理由があるのでしょうか。

物理的な理由

単純にお金や時間が無くて、大変そうだから子供を作らないという理性的な人も少なくありません。

賃金格差、待機児童、男性の育児休暇の問題…etc

現代の日本には子供を作る事に積極的になれない問題がたくさんあります。

自己の幸福追求

  • 子供がいない方が自由で気楽
  • 子供がいない方が楽しい
  • 子供が好きじゃない

と言った自己の幸福追求の結果として、子供を作らないという選択をする人もいます。

そういった価値観を持っていることで知られているのが、女優の山口智子です。

山口智子は雑誌のインタビューで「ずっと親にはなりたくないと思っている」「血の結びつきを全く信用していない」と子供を作らないことについての自身の考えを公にしています。

厭世的あるいは哲学的な理由

こんな世界、こんな時代に生まれてくる子供がかわいそう…

そんな理由で、子供を作らない人、あるいは夫婦もいます。

1995年に公開されたデヴィッド・フィンチャー監督の大ヒット映画「セブン」にも、妊娠した主人公の妻が、こんな世界(とても治安の悪い街に住んでいる)に生まれてくる子供を心配して涙を流すシーンがあります。

子供を作らないという選択2

哲学的な価値観で子供を作らない選択をする人もいます。

作家の埴谷雄高は「人間にできる最も意識的な行為として、自殺すること、子供をつくらないことの二つがある」という思想を持っており、決して子供を作りませんでした。

埴谷雄高と交友のあった哲学者の池田晶子も、子供は絶対に産まないという条件で結婚しています。

子供を作らないと後悔するのか

子供を作らないと後悔するのか…

それは本人にしか分かりません。

人間の価値観なんてものは移ろいゆくものですから後悔することもあるでしょう。

気持ちひとつで後悔する人もしない人もいます。

今の幸せや有難みを噛みしめ「これでいいのだ」と感謝できる人もいれば、今の不足や自分に無いものばかりを意識して、毎日の様に後悔している人もいます。

反対に、子供を作ってしまったことで後悔する人だっています。

そんな人は往々にして、子供に過度な期待してしまう人でしょう。

  • 自分の寂しさを埋めるため
  • 老後の生活やお金の心配をしないため
  • 自分が果たせなかった夢を実現させるために

当たり前の事ですが、人生が思い通りにならない様に、子供だって思い通りに振舞ってはくれません。

そして、そんな自己中心的な理由で生まれさせられる子供は堪ったものではありません。

上述した様な「生まれてくる子供を思って理性的に振舞う人々」を少しは見習ってほしいものです。

親になる資格

お金や時間に余裕がないから…

こんな世界、こんな時代に生まれてくる子供がかわいそうだから…

そんな理性的な思考ができる夫婦こそ、親になる資格を有していると思わずにはいられません。

親になる資格なんて何かは分かりませんが、少なくとも毒親にはならないと思うのです。

自分の子供と言えど、自分たちとは違う時代に生き、自分たちとは別の魂を宿す他人である。

そんな本然の人間関係、親子関係が構築できる人だと思うのです。

親に求められる役割はしっかり果たす上で、過度な干渉、あるいは育児放棄や虐待なんてすることはないでしょう。

そんな考え方のできる夫婦のもとに生まれる子供は、きっと大切なものを自ら見出せる人になれると思います。

自分の人生を自由に謳歌し、世界にとっても有益な人となることでしょう。

DINKs

DINKsとは、子供を意識的に作らない夫婦、またその生活観のことを指します。

Double Income(ふたつの収入)No Kids(子供なし)の頭文字を並べた言葉です。

個性や多様性が重んじられる時代、この様な考え方や価値観を持つ人や夫婦が現にいることが、DINKsという言葉で言語化・概念化される事はとても素晴らしいことです。

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