映画「息もできない」のあらすじ・世間の評価・感想【ネタバレ】

※ネタバレしています。

映画「息もできない」

「息もできない」とは

「息もできない」は、2008年に公開された韓国映画で、俳優であるヤン・イクチュンが監督・脚本・主演をつとめた映画です。

韓国の原題である「トンパリ」とは「糞蠅(くそばえ)」を意味する罵り言葉です。

息もできないを作った当時、映画人として成功しているとは言えないヤン・イクチュンは、途中で映画の製作費が足りなくなります。

しかし、自らの家を引き払うなどして、なんとか作り上げた渾身の一作です。

息もできないは公開後、世界中で高い評価を受け、様々な賞を獲得しています。(詳細は後述)

監督のヤン・イクチュンは、息もできない発表以上、日本でも高い評価を受け「かぞくのくに」「夢売るふたり」「中学生円山」「あゝ、荒野」などの日本映画にも出演しています。

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「息もできない」のあらすじ

母と妹の死の原因を作った父親に対して強い憎しみを持っている主人公サンフンは、不幸な育ちもあって、世界の全てに唾を吐く様な男です。

借金の取り立て屋として生計を立てる主人公はある日、女子高生のヨニと出会い、衝突しながらも惹かれあっていきます。

似たもの同士であるヨニとの出会いをきっかけに、少しずつ人間らしい心を取り戻してきた矢先、サンフンに不幸な結末が訪れます。

映画は終止、怒りと憎しみ、そして暴力の連鎖を描いています。

それはある意味で世界のリアルな有り様であり、観る者にえぐる様なメッセージを投げかけます。

それでも少しの希望を持って生きようとする人間たちの生き様を目の当たりにすることができます。

「息もできない」の世間的な評価

「息もできない」は公開後、世界中で高い評価を受け、様々な賞を獲得しています。

  • 東京フィルメックス(最優秀作品賞)(観客賞)
  • キネマ旬報ベスト・テン(外国映画ベスト・テン第1位)(外国映画監督賞)
  • ロッテルダム国際映画祭(タイガー・アワード)
  • ドーヴィル・アジア映画祭(ゴールデン・ロータス賞)(国際批評家賞)
  • バルセロナ・アジア映画祭(ゴールデン・ドリアン賞)
  • ウラジオストク国際映画祭(グランプリ)(最優秀女優賞)

特筆すべきは、日本の映画批評で信頼できる(お金の臭いしない)数少ないメディア「キネマ旬報」のベスト・テンで1を獲得していることです。

また、キネマ旬報ベスト・テンと並んで信頼できる映画ランキングである宇多丸シネマランキングでも3位に選ばれています。

さらに、個人ブログやSNSなんかを見ていても、生涯ベスト級に好きな映画だと言ってる人も少なくありません。

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「息もできない」の感想

息もできないの見どころは、絶望の中でも希望を捨てずにもがいている人間の生き様ではないでしょうか。

心が飢え乾いて、怒りや憎しみ、暴力に身を委ねる人間でも必死にもがいているのです。

ヤン・イクチュン監督は父親が母親を殴るのを見て育ったらしいのですが、それを映画作りに昇華させたのは、大きな勝ちだと思います。

私が特に突き刺さったシーンが3つあります。

1つめが、主人公のサンフンと女子高生のヨニが、夜の川で二人してすすり泣くシーンです。

お互いの素性をよく知らないはずなのに、似た者の二人はお互いに引かれ合っていきます。

二人の日常の闇が溢れ出す瞬間です。

映画「息もできない」2

2つめが、自殺を図った父親を病院に連れて行く際に、サンフンが「何があっても生きろ」と言うシーンです。

普段は日常的に父親に暴力をはたらくのに、いざ死にそうになったら介抱するなんて矛盾してる様に思いますが、それこそがサンフンの混乱した心胸なのだと伝わってきます。

3つめが、死にゆくサンフンが意識が無くなっていくなかで、母親と妹の記憶を回想するシーンです。

血だらけになり、瀕死状態の中、母親と妹の事を思い出すサンフンの姿に、涙が溢れてしまいました。

映画のラストでは、ヨニの弟が、かつてのサンフンの様に町で暴力を働いています。

暴力の連鎖は無くならないのか…

そんな問題を提起して終わります。

いつまでも暴力が、ひいては戦争やテロが無くならないのか。

私はいつの日か、世界から暴力が無くなる日が来ると信じています。

なぜなら、ヤン・イクチュン監督自身が、不幸な育ちをこうして映画づくりという形に昇華したではありませんか。

ヤン・イクチュンが身をもって、暴力が連鎖させない決意を表明した、あるいは体現した映画こそ「息もできない」ではないかと思います。

「人間に絶望したまま終わらない」そんな思いに満ちた作品だからこそ、私財を投げ打ってまで世に公開したのではないでしょうか。

私にとって、生涯でベスト3に入るほど好きな映画です。

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カテゴリ - 映画

2018/06/18

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