「パーマネント野ばら」の概要
パーマネント野ばらは、2010年に公開された日本の映画で、西原理恵子の同名漫画作品を映画化したものです。(2017年には舞台化もされています)
監督は吉田大八。
デビュー作品である「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」で世界から評価され、2作目「クヒオ大佐」を経て、3作目がこの「パーマネント野ばら」です。
出演者は、菅野美穂・江口洋介・池脇千鶴などの実力派が揃っています。
映画の舞台、ロケ地は高知県宿毛市小筑紫町。
とても自然がキレイな場所です。
主題歌はさかいゆうの「train」
映画に合っていてとても素晴らしい曲です。
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「パーマネント野ばら」のあらすじ
四国の小さな港町、その町にある唯一の美容院「パーマネント野ばら」を取り巻く人々のヒューマンドラマです。
主人公であるなおこ(菅野美穂)は離婚し、娘を連れて母の経営するパーマネント野ばらに身を寄せています。
娘のもも(畠山紬)や破天荒なお母ちゃん(夏木マリ)、男運がとことん悪い二人の幼馴染みのともちゃん(池脇千鶴)とみっちゃん(小池栄子)、義父のカズオ(宇崎竜童)、そして密かに逢瀬を重ねる男カシマ(江口洋介)に囲まれ、それなりに楽しく暮らすなおこ。
この町で一番まともな人間に見えるなおこだが、ふとした瞬間に見せる戸惑いと孤独。
物語りが進むにつれて浮き彫りになる不思議な違和感。
一番まともでなかったのは…。
「パーマネント野ばら」の世間的な評価
パーマネント野ばらは、韓国の映画祭である富川(プチョン)国際ファンタスティック映画祭にて、NETPAC賞(最優秀アジア映画賞)を受賞しています。
ヒューマンドラマとしても、またストーリーや俳優の演技の完成度も実に高い映画です。
個人的には、もうちょっと評価されてもいいんじゃないかと思います。
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「パーマネント野ばら」の感想
※ここからネタバレしています。
描かれるリアルな人間の心理描写、ストーリー自体の完成度、俳優の演技、強いメッセージ性…etc
とても見ごたえのある素晴らしい映画です。
主人公であるなおこをはじめ、登場人物がみんなキャラができていて、その人間の背景が色濃く、俳優たちが輝いています。
美容院に集まる客のおばちゃんたちが男性器の話で盛り上がるシーンなど、笑える場面もたくさんあります。
中でも、方々から高い評価を得ているのが、フィリピンパブを経営するみっちゃん役の小池栄子。
そうそうたる俳優陣を喰ってしまうほどの存在感を放っていました。
そして、何と言ってもこのパーマネント野ばらの凄いところは、衝撃的なオチを含むメッセージ性の強いストーリーです。
ストーリーの中心は、田舎に帰ってきたシングルマザーのなおこと中学校教師のカシマの恋の行方です。
仲睦まじいふたりなのですが、どこかハラハラするというか、危なっかしい違和感が漂ってるんですね。
ある日、ふたりで温泉旅館にデートに行くんですが、カシマが途中で何も言わずにひとりで帰ってしまうんです。
普通に考えたら男としてあり得ない行為で、多くの視聴者がクソ野郎だと思うシーンでもあります。
で、衝撃的なオチというのが、このカシマはなおこが学生時代の恋人だった先生で、既に死んでいたんです。
なおこはいつも、想像の中でカシマと逢瀬を重ねていたのです。
カシマの存在がなおこの想像だと分かれば、違和感を感じさせていたこれまでの伏線がいっきに回収されていきます。
登場人物の中で一番まともに見えたなおこが、ある意味では一番まともじゃなかったんです。
映画のラストでのなおこのセリフ「ウチ、狂ってる?」の問いかけ。
ハッとした人、ドキっとした人、怖くなった人、色んな受け止め方があったと思います。
私は気づいたら涙が溢れました。
なおこは狂ってるのか、それなら私も狂ってるのか、狂気とか正気とか何だろう、そもそも境界線なんてあるのか…
深いテーマを私に投げかけてくれた作品でした。
パーマネント野ばらに出てくる誰もが、いや人は皆、淋しさを背負って生きています。
田舎でも都会でも。
絶望しても、裏切られても、人は人を求めずにはいられないのです。
この映画の中に「人は二度死ぬ。一度目は肉体が朽ちた時。二度目は人の心の中からいなくなった時」と言った内容のセリフが出てきます。
なおこは、カシマが本当の意味で死んでしまわない為にも、カシマを思い続けたのではないでしょうか。
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