「悪人」の概要
悪人とは、2010年に公開された日本の映画です。
原作は吉田修一の小説「悪人」、監督は李相日、主演は妻夫木聡です。
「悪人」のあらすじ
鬱屈した日々を過ごす主人公の祐一は、ある事がきっかけで人を殺してしまいます。
祐一は出会い系サイトで知り合った別の女性である光代と逃避行をします。
光代との心の交流を深める中で、祐一の罪悪感はどんどん募っていきます。
祐一は確かに「罪」を犯した、しかし本当に彼だけが「悪」なのか…
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「悪人」の世間の評価
- 日本アカデミー賞 / 最優秀主演男優賞・最優秀主演女優賞・最優秀助演男優賞・最優秀助演女優賞・最優秀音楽賞
- モントリオール世界映画祭 / 最優秀女優賞
- キネマ旬報ベスト・テン / 日本映画1位・日本映画監督賞・日本映画脚本賞・助演男優賞
- ブルーリボン賞 / 主演男優賞
- 山路ふみ子映画賞 / 映画賞&新人女優賞
- 日刊スポーツ映画大賞 / 作品賞 主演男優賞主演女優賞
- 報知映画賞 / 作品賞・主演女優賞・助演男優賞
- 毎日映画コンクール / 日本映画大賞
「悪人」の感想
悪人はサスペンス映画としても見ごたえがあるのですが、「悪意」と「罪」に関して鋭い問題提起をしている素晴らしい映画だと思います。
主人公の祐一は、確かに取り返しのつかない殺人の罪を犯しました。
しかし祐一だけが悪なのでしょうか。
映画の終盤に、もう一人の主人公とも言える光代がつぶやくように問いかけます。
「あの人は、本当に悪人なんですかねぇ…」
祐一は不幸な育ちがあった。
殺された佳乃も、ある意味では祐一の心を殺した。
その佳乃にも、すれた性格になってしまう様な閉塞的な環境があった。
登場人物ひとりひとりの、その人の背景が見える様な描き方が秀逸なので、本当の「悪意」の出どころを観る者は考えざるを得ません。
例えば、戦争という人間の愚かな営みを考えてみます。
誰もしたくないはずなのに、人類は未だに克服できていません。
その悪意の出どころはどこなのでしょう。
意思決定をする政治家には、自分の国を守るという大義名分があります。
それを支える軍事産業の従事者や兵士には、自分や家族が生きていくためという大義名分があります。
自分がどれだけ傷つけられ、奪われて、損をする事になって、やり返さない人間(悪意のバトンを渡さない人間)がいるでしょうか。
スケールは小さくなりますが、ブラック企業という問題を観察してもそうです。
ブラック企業なんてなくなればいいと思いながら、コストパフォーマンスだけを考え、私たちはブラック企業が潤う様な消費活動をしてませんでしょうか。
人間はみんな自分がいちばん可愛い生き物です。
私たちは無意識のうちに、悪意を生む、あるいは拡散させる一端を担ってしまってはいないでしょうか。
私は「悪人」という映画から、そんなメッセージを受け取りました。
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