先日、再放送されていたSWITCHインタビューの松本明慶と林要の回がまさに神回だったので感想を書きたいと思います。
SWITCHインタビューはほとんど視聴している私ですが、この2人ほどグル—ヴ感が出ている回はなかなかありません。
収録が終わっても2人で話し込んでいたそうです。
あの有名なロボットPepperを作った林要が、仏師である松本明慶に会いたいと実現した対談。
私が特に印象的だったのが、番組の後半です。
創造者としての話を越え、使命・天職の話題になった時です。
天職に対して2人がどの様に考えているのか、2人がどうして天職を見つけられたのか語ります。
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松本明慶の天職との出会い
松本明慶は職人町に生まれ、もともと仏師という職業が身近だったそうです。
そして17歳の時、4つ下の弟が亡くなったのを機に300体を超える仏像を夢中で彫ったそうです。
特に母親が傷ついていたらしく、家族を癒したいという思いもあり仏像を彫っていました。
そして19歳の時、野崎宗慶に弟子入りし、すぐに頭角を現し後継者となりました。
プロになったら、家族のため、自分のためだけでは駄目だと言います。
伝統を残す義務もあるし、人々が喜んでくれる、手を合わせてくれる仏像を彫ること。
それが仏を彫るということなのだと。
番組の後半ではこう語ります。
努力したら天命は来る。
天命というのは自分が感じるものではなく、周りから聞こえてきます。
自分が「これが天職」と言ったって、周りが下手糞と思ってたら、それは天職じゃない。
天職というのは、周りが認めること。
この言葉を聞いて、私は「やりたい事とやれる事」という言葉を思い出しました。
天職は「やりたい」だけでは見つからない。
やれる事、つまり、周囲が認めたり、頼られたりすることの中にも天職を探すヒントがあるのではないかと思いました。
林要の天職との出会い
林要は大手自動車メーカーに空気力学の専門家として勤めていて、業績は右肩上がりだったが、危機感は凄くあった様です。
そんな時、孫正義の主催する次世代のリーダーを育成する学校に行きました。
そして、孫正義から「ロボットをやらないか」と声がかかり、その時、使命だと思った。
ロボットに関しては素人で、ソフトウェアすらまともに書けなかった自分にとっては、リスクが大きすぎるとも思った。
しかし、成功するためではなく使命だとしたら成功も失敗も無いと考え飛び込みました。
努力あるのみ
松本明慶と林要の話から、天職の探し方として見えてくるのは
- 知識や技術の向上に努めた
- 学びを得る事や見識を拡げることに貪欲(林要は自動車メーカーにいながら孫正義の学校に行った)
- 人の役に立つという軸からブレない(松本明慶は相手の為にならない仕事は断ったりもした)
- 小さなことでも、やるべきことを真剣にやる
- ワクワクする事に忠実(具体的な言及は無かったが2人の顔がイキイキしている)
ではないでしょうか。
シンプルに、松本明慶が言う「努力してれば」なんだと思います。
天職は、技術や知識が高まり、できる事が増え、見識が拡がっていく中で、努力した結果として掴めるものなのではないでしょうか。
「天から授かる務め」という意味を持つ言葉ですから、何もしていないのに自分の中に急に湧き出るものではないのでしょう。
そして印象的なのが、林要は40歳あたりで天職に出会ったこと、10代から仏師の道を歩んでいる松本明慶でさえ「自分の仕事を天職だと思えたのは35〜6歳」だと言っていたこと。
天職に出会うタイミングや早さは人と比べることでもないし、焦っても仕方が無いことなんだと感じました。
天職とは、使命と言い換えてもいいでしょう。
人間が生きる上で「宇宙で唯一無二のこの私が、この命をどう使うか」というテーマは誰にとっても重要なテーマだと思います。
ヴィクトール・フランクルの名著「夜と霧」で書かれている人生観「なぜ、なんの為に生きるのか」ではなく「この生がこの私に何を求め、期待しているのか」に通じます。
人が天職を探し求め、見つけ、それを使命と捉えて生きることは、世界の平和や発展に大きく影響することだと思います。
本当に素晴らしい対談でした。
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天職を探したい方にオススメの本
天職は寝て待て〜新しい転職・就活・キャリア論〜
組織開発・人材育成の専門家、山口周によるキャリア論です。
この本は「向いている仕事」「やりたい仕事」というベクトルではなく「世界は自分に何を求めているのか」という逆転の思考を解説しています。
上述した「夜と霧」で書かれている人生観「なぜ、なんの為に生きるのか」ではなく「この生がこの私に何を求め、期待しているのか」に通じる内容でした。
そして、タイトルにある様に「天職を寝て待つ」のだとしたら、どのように待つのかも書かれています。
著者自身が数回の転職を経験していることや、他者のキャリア構築に関わる仕事をしていること、世界の様々な事例を引用しながら解説をする説得力のある内容です。
書き出しは、イエス・キリストが、収税人(当時は最も賎しい職業とされていた)のマタイ(後に12使徒のひとりとなる)を召命する話から始まり、そこらの書籍とは一線を画します。
山口周さんはTwitterもとても有意義で常にウォッチしています。
歯に衣着せぬ言葉で、多くの気づきや学びを与えてくれます。
チャンスがなかなか来ないと言う人が居ますけど、チャンスを見抜くのは難しいんです。なぜかというと、チャンスというのはウラ面にしか書いてなくて、じゃあオモテ面にはなんて書いてあるかというと、メンドクサイ仕事って書いてあるんです。メンドクサイ仕事を避けるとチャンスもにげちやうんですね。
— 山口周 (@shu_yamaguchi) 2017年10月6日
みんな「自由に生きたい」っていうけど、じゃあ自由を縛るものは何か?って考えると、やっぱり「自分」なんですよね。会社や学校で埋め込まれた「ものの見方」「価値観」「〜べきである」という思い込みが、自由を阻害するんです。自分が何に縛られているか、そこに気付くのがまずは大事だよなあ、と。
— 山口周 (@shu_yamaguchi) 2017年12月2日
哲学を学んで良かったのは、よく言われる「僕たちは難しい時代に生きてる」という主張が嘘だとわかるようになったことです。宮崎駿の「風立ちぬ」を見ましたか?あれは、もっと難しい時代に生きた人がいるんだよという宮崎監督の抗弁ですよね。ソクラテスの頃から世界はずっと難しい場所なんです。
— 山口周 (@shu_yamaguchi) 2017年10月21日